夢に向かって
高知聖園天使園
園長 谷本 恭子
高知聖園ベビーホームで40年間勤務し、今年度から児童養護施設「高知聖園天使園」の園長の任についています。赴任したばかりの4月、高校3年生の子ども達と話した時に大きな衝撃を受けた言葉があります。
「1年生の頃は将来の夢があったけど、今は何もない」「専門学校に行きたいけど、お金がないから無理」「どこでもいいから就職するしかない」「私は生きていていい存在? 生きている価値がある?」等々。高校に行けなくなっていたり、非行に走りそうになったりし ている子ども達。どの子も将来に夢を全く持てないでいる。持ちたいと願っても夢を描ける手立てを知らない。17歳にして自分の人生を諦め、目標を失って前を向いて進めなくなっている。そのことに驚きと憤りと悲しみを感じました。
そう話していた子ども達は、今、少しずつですが、夢に向かってはばたき始めています。そのはばたきは、巣立ちのヒナのようにおぼつかなく、不安定です。その子ども達を職員が励まし、認め、慈しみ、夢を実現するための手段を伝えながら、飛翔を確かなものにするために親鳥のように支えています。
「何故だか分からないけど涙が止まらない」と泣く子をずっと静かに抱きしめる。「大丈夫。何も心配いらない、みんなで守るから」とめどなく流れる涙は子どもたちの心の傷を癒してくれるでしょう。
幕末の志士、吉田松陰は「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし。計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」という言葉を残しています。私たちには身近にこの言葉を証明してくれる江草理事長の存在があります。年を重ねられても夢を追及するたゆまない姿勢は、子 どもや職員の頼もしい指針となっています。子どもも職員も園長も夢を語れる天使園でありたいと思います。
乳児院で長年働いてきた私が児童養護施設で何ができるのか。明確なものがないままに「天使園を暖かい家庭のような居心地の良い場所にしたい」「みその(聖なる園)を平和で 優しさに満ちた光に包まれた場所にしたい」という思い(夢)だけを持って着任しました。その夢に向かって職員と手を携えて進んでいきたいと思います。
「だれでも夢をかなえることができる。それを追いつづける勇気があれば」
(byウォルト・ディズニー)