はばたき

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岡山聖園子供の家 園長 則武 直美

エッセイ「あなたご自身が」
 成徳学校に勤め始めて2年目に入った時、私は大いに悩みました。自分の無力さにぼうぜんとして。
 生徒さんたちは百戦錬磨というか、まだ年は若いけれども人生の修羅場のようなところを何度もくぐって来たような人たちばかり。それに引き換え自分は大した苦労も知らず、のほほんと生きてきた人間で、到底太刀打ちできるものではありません。ここで私は何ができるのだろうか、何か役に立つようなことがあるのだろうかと。
 そんなとき、困ったときの神頼みと教会に足を運びました。日曜日のミサにあずかり礼拝堂から外に出ると、恩師であるシスター渡辺和子先生のお姿が目に飛び込んできました。「ああ、これぞ天の助け」と勇気を振り絞って近づき、ごあいさつ申し上げた後、自分の今の悩みについておもむろに切り出しました。私は生徒さんに教えるべきものを何も持っていないと。するとシスター渡辺は即座におっしゃいました。「あなたご自身がおありになるじゃありませんか」
 すぐには理解できませんでした。でもそのお言葉を心の支えに、日々自分のできることを淡々とやっていくうちに、数年がかりでおぼろげながらシスターがおっしゃった言葉を、自分なりに解釈することができるようになりました。つまり自分は自分であって、自分以上でも自分以下でもない。自分の力の及ぶ限り頑張るけれど、自分の能力以上のことはできない。その謙虚さを持つこと。自分の力以下のこともできない。それは自分のプライドが許さないこと。
 シスター渡辺がおっしゃった本当の意味をまだ理解するには至ってないかもしれません。でもシスター、ありがとうございました!

(平成24年2月28日 山陽新聞夕刊「一日一題」掲載)

写真:エッセイ「あなたご自身が」

ボランティアさんありがとう!(お礼のメダル)